悩みを糧に

仕事で悩むことが多くなった。

「大いなる力には大いなる責任が伴う」(スパイダーマン)よろしく、ある程度責任のある立場になると起こりうることだとは思うが、理不尽なことが多いし(それに往々にして、得た力に対して見合わないほど責任が重くなりますよね)、得意分野の仕事から離れて「つまんないなー」と思うことも多くなってきた。贅沢な悩みではあるが。

Sさんに1年ぶりに連絡したのは、ちょうど年が明けてから絶不調の時で、してもしなくてもいいぐらいの小さな話だったけれど、報告しとこうと思うことがあったから。

よくある近況報告をお互いにして、「時間があったら会いに行くよー」というLINEをいただいていたのだが、まあ忙しい身の人なので、半分社交辞令だと思って、それでも久しぶりに連絡がついたことを嬉しく思っていた。

Sさんは以前同じ会社で働いていた人で、ベテラン敏腕添乗員。年間200日は海外にいる人で、LINEした時もルーマニアにいた。そんな多忙な人が今日ふらりと僕の勤務先に立ち寄ってくれた。

仕事関連でお願いしたいこともあったので、少しはその話をしたけれど、ついつい人生相談になってしまった。

Sさんは諭すでもハッパをかけるでもなく、ただ僕の話をじっくりと聞いてくれて、自分の経験談を交えて話をしてくれた。

Sさんが感情的になったり、声を荒げたりするのをみたことはなく、派手ではないが安心感をもたらせてくれる人だと思っていた(だからこそ悩んでいる中でも連絡したのだけれど)。でも、その今のSさんの誠実で穏やかな人柄が、どういう経緯を経て培われたのかがわかるようなエピソードを話してくれた。

それは今の自分の立場に腹をくくる覚悟を持たせてくれるような話だった。お仕着せがましくもなく、説得するわけでもなく、腑に落ちる感じで。

頑張らなくては、と自然に思う。頑張りすぎない程度に、でも、僕も誰かにとっての今日のSさんのような存在でいるために。

Sさんは来週にアメリカに旅立って、それからまた世界中を飛び回る毎日に入るという。

次にお会いするときには、もっと笑顔で会えるようにしないといけない。