そういうわけで文学フリマ東京に行ってきた。
僕が以前に行った2006年の会場は、秋葉原の東京中小企業振興公社秋葉原庁舎(長い)で、会場規模もブース数もかなり限られていて、もう少し地味なイベントだったように思う。
前回のときは芥川賞作家の長嶋有が出した『メルボルン1』という同人誌目的で行っただけなので、長嶋さんのブースに行って、緊張しながら少し会話をして(会話ってレベルではなかったけど)、ちらちらと他のブースを眺めながらひと回りしたものの、30分と滞在せずに帰宅した覚えがある。
今回の僕の目的は、なんといっても江戸川台ルーペが参加したアンソロジー本『元祖オーケン伝説』を購入するため。
とはいえ、せっかく出向くのだからと、事前にwebカタログでどんなブースが出ているのか調べて、興味のある本は試し読み&購入しようと考えていた。
さて、開場時間10分ほど前について、入場待ちの列に並ぶ。
会場の、東京流通センター 第一展示場(これはこれでそれなりに長い)は、予想よりも照明が明るく、また列に並ぶ人たちを見ると、着物や勝負服のような“ハレ”の格好の人もいれば、普段着で年配のご夫妻もいて、以前(13年前だ)とはだいぶ違う印象を受けた。前はもっと“いかにも”な人ばかりだった気がする。
ただ、スーツケース持参率が高いのは、このイベントが本を大量に買うことになるから、ということを物語っていた。
並んでいる場所から、会場内の様子がガラス越しに伺えて、「それでは、文学フリマ、開場します!」という運営の人の声と、出店者たちによる拍手が聞こえてくると、ガラス越しにも高揚が伝わってきて、こちらも楽しくなる。
果たして、会場に入ると、多くのブースが出ているわりには、通路にゆとりがあり、動きづらい感じはしなかった。
気になるところをローラー作戦で廻っていったが、やっぱり会場内は、文学好きらしいシャイな雰囲気で、「はしゃぎたいけど躊躇する」というアンビバレンスな思いを持っている人たちが多いなぁと、売り子さんからもお客さんからも感じた(そして、それは僕も同じだ)。
広いと思っていた会場も、ぐるっと廻ってしまえば、1時間とかからずに物色は済んでしまい、ここでようやく「曖昧書房」さんに出向き、江戸川台ルーペに会う。
作品を出している身分だし、忙しいだろうと挨拶だけで帰ることも考えていたのだが、彼のカクヨム仲間で初めてお会いした詩一さんも加わって話が盛り上がったので、リフレッシュルーム(休憩室)に移動して、本腰を入れて4人で身の上話や創作界隈の話をすることに。
さらに途中からげえるちゃん、たかなんさん、キタハラさんという、江戸川台ルーペつながりで「Twitterとカクヨムで見る有名人」たちも加わってオフ会の様相を呈してくる。
で、結局4時間以上そこで話していたよ。
文学好きという、ただ、その一点だけで(しかしものすごく大きな一点のおかげで)、初対面にも関わらず同じサークルのメンバーみたいに話せて、この上なく楽しかった。
総じて思ったことは、紙の本強くない?ってこと。
電子書籍を否定しないし、それで読む本もあるけれど(カクヨムだってサイトだし)、こと「文学」においては紙の本、まだまだ人気あるよ。
それから、表紙のイラストや装丁が素敵な本が多く、ジャケ買いしそうになった。個性が強いものが多いのは同人誌ならではなのか、その点は本屋でならんでいる本を見るよりも楽しかった。
若者の本離れ、とか言われるし、経営難になる本屋も多い昨今、事実活字を読む人口は減っているのだろう。
でも、決してなくならないだろうこの熱狂をどうにかして盛り上げたいし、僕も“端っこ”でいいから、これからもこの世界に混じっていたいな、と心から思う。
さて、最後にやや個人的な話を。
今回、文学フリマに行った目的のもうひとつは、人を引き合わせることだった。
そもそも、僕はそういうことを滅多にやらない人間だし、状況次第では「やらなきゃ良かった案件」になることも覚悟していたけれど、創作に関わる人のつながりは予想通り(逆に意外にも、か?)相性が良かったようで、リフレッシュルームでの懇親会はとても充実した時間になった。
思い返してみたら、そういえば今までも僕が人を引き合わせた時、その片割れの九分九厘は江戸川台ルーペであって、その点を踏まえても、合わせるべき人は間違いなかったな、と思う。
江戸川台ルーペはじめ、お話しした皆さん -詩一さんの家庭話、げえるちゃんのTwitterと違わぬ“げえるちゃんっぽさ”、たかなんさんの爆買いぶり、キタハラさんの漫談トーク- 具体的な創作苦労話はもちろんのこと、皆さんの醸し出す雰囲気とか、存在自体(物書きってちゃんと実在するんだー)という点が、とてもタメになりました。
燻っていた僕自身の創作魂にも火がつきました。あのメンバーでいつか共同制作できたら素敵だなー、と妄想したりしました(一本でも書いてから言おうね)。
そして、出店者として店を守っていた曖昧書房の斉賀 朗数さん、次回はぜひ色々お話し聞かせてくださいませ。
皆さん、改めて、ありがとうございました。
いつか、「この日から始まったのだ」としみじみ思いだせるものを作れるように、僕も今日から創作に軸を移動していきたい。
小さい思いだけれど、そう決意した、文フリのあと。