スタンダードアローンコンプレックス

冷やし中華が食べられない。

酢の入った食べ物が全体的に苦手で、酢の物ももずく酢もダメ。
酢豚や油淋鶏みたいなタレの中に酢を忍ばせている系の料理は大丈夫(むしろ大好き)なので、そのまんま“酢”の酸っぱさが感じられるのがダメなんだと思う。小さい頃は酢飯がダメで寿司が食べられなかったぐらいだった。

「じゃあ冷やし中華はゴマダレ派ですね」みたいなことを言われたのだけれど、僕の中で冷やし中華は「人生において食べなくて良いもの」認定されているので、ゴマダレだろうが担々麺ダレだろうが“その次”を考えることはない。
もっと言うとキュウリも苦手だし、紅生姜も好きではないし、入っている具材からして、酸っぱくなくても別に惹かれるものではない。
ふと考えたら、つけ麺もあつもりの方が良いし、僕にとってラーメンは暖かいもの、という頭なのかもしれない。

でも、そばは温かいのよりも、もりそばが好きだ。
はじめて入る店だったらだいたいもりそば、もしくは天もりを頼む。それでその店の力量がわかるというものだ(急に池波正太郎ばりに食通ぶってるな)。

今日の昼は、立ち食いそばにした(急にB級グルメになります)。
暑いのも理由だけど、ジムの帰りだったのでさっぱりと冷たいそばを食べたかったのだ。で、この時期だと「冷やし中華はじめました」ばりに、冷やしたぬきだの冷やしきつねだのがでてきて、実はそれは食べてみたいのだけれど、うかつに頼めない理由があるのだった。

こどもの頃、冷やしたぬきそばを頼んだら、つゆが酸っぱかったのだ。

その時の僕の反応は推して知るべしなんだけれども、とにかくそれ以来「もりそば(ざるそば)以外の冷たいそばは冷やし中華のように酢が入っている」というのが僕の知識のスタンダードになってしまい、冷やしたぬきを食べたくても酸っぱいとアウトなのでいつも頼めないでいる。
「店の人に酢が入っているか訊けばいいじゃない」というご意見を多数いただくと思うが、実は世間では「酢を入れない」のがスタンダードじゃないかと踏んでいるので、それを店に訊いてしまったら「酢が入っていないのは当たり前じゃないか、冷やし中華じゃないんだから!」という態度を取られてしまいそうで、しかも「そんなこと言うなら酢入れてやろうか」みたいな余計な気遣いをされて、「常連さんのワガママ仕立て酢入り冷やしたぬき」が出されたら、それはもう顔馴染みの店がひょんなことから出入り禁止という悲劇を引き起こしかねないので、とても訊けないのだ。顔馴染みのそば屋、1軒もないけどね。

でも、今日は「冷やし天玉そば」があまりにも美味しそうだったので、いちかばちかで頼んでみた(もちろん酢入りかどうかは訊いてない)。
出てきたものを眺めて「これで酢入りだったら泣きながら(世をはかなんで)食べよう」と意を決して一口食べてみたら……

まあ、酢は入ってませんよね。

やっぱりこれがスタンダードなんだろうと思うんだけれどね!でも100%の自信はないんですよ。で、冷やし中華が好きな人は冷やしそばが酸っぱくても美味しく食べられるから、こういう悩みはないと思うんですがね!(好みの問題はあるけれど!)

そんなわけで美味しくいただけたのだが、この「冷やし天玉」は大根おろしが入っていたり、卵は生卵じゃなく温泉卵だったり、これはこれで結構なアレンジがかかっている気がする。
となると、この冷やしそばを、世間の冷たいそばの標準と考えて良いのか否か。

また別の店で検証する必要があるが、悩むのが嫌だから多分もう頼まない。
もうずっともりそばにしよう。天もりに。
池波正太郎になろう。

そう、駅前の富士そばで決意した7月初日。

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