『恋はデ・ジャブ』

ビル・マーレイの名前をブログでちょいちょい出しているのに、その中でとても面白かった(僕好みだった)『恋はデ・ジャブ』のことをブログに書いていなかったので書いておく。

ビル・マーレイの映画は、なんだかんだでハッピーエンドなので安心してみていられるのもそうだけど、つまりビル・マーレイという役者の職人芸みたいなもの(淡々とした とぼけた ダメ男が改心して報われる)をみるようなもので、この映画はまさにその通りの映画だ。

主人公のテレビキャスター フィルは取材先に行った田舎町で突然、同じ一日がループする現象に巻き込まれてしまう。
なぜ田舎町に閉じ込められるのか、毎日同じ日をループするようになるのか、その原因みたいなものは一切ない。その理不尽さはあるけれど、ループすることを逆手にとって、好みの女性に、名前や出生のことを聞いておいて昔馴染みを装ったり、目当ての女性を攻略していく様は、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のようで、あの映画はこの演出法を真似てるのではとも思った。

自分は他の人のことを理解してきているのに、周りは翌日(次の同日)には、ダメ男のままの彼として接する寂しさ。思い出が自分だけのものである寂しさがせつない。バチがあたるようなことをしたり、誰かに呪いをかけられたりといった原因もないので抜け出し方もわからない。いつまで続くかわからない中で、彼は前向きに生きようとする。
それは僕らの日々にもつながる。

同じような日々が続く中で、何かをかえようと努力する。それも、ひとの役にたとう、周りを喜ばせることをしようということに結局は落ち着くのではないか。

結局「ひとりは寂しい」のだ。

ひとりはつまんない。のだ。

フィルは自分勝手で、人付き合いが嫌いな人間として描かれる。今まではそれでよかったのだろうが、ループを繰り返すことで、ひととの関わりが自分を幸せにしてくれることに気づく。そしてフィルが自分のためではなく、ひとのために行動しようと気づき、それを実践したときに、救いがくるのだ。

単純なコメディとしてみても楽しいが、人生の、そして周りのひとの大切さを感じさせる可愛い作品。
ただのオヤジのようでなんとなく憎めないビル・マーレイにふさわしい。