『南山の部長たち』鑑賞日記

『南山の部長たち』という韓国映画を観た。

週刊文春でレビューされていて気になっていたところに、ダースレイダーさんと宮台真司さんの配信コンテンツ「100分de宮台」の中で語られていたので、これは観ておくべきだろうと思ったのだ。

こういう硬派な映画は人を選ぶので、大抵ひとりで観に行ってしまうのだが(っていってもマーベル映画も含め、ほとんどひとりだけどな!)、せっかくだから、誰かこの映画に興味のありそうな人いないかなーと考えて、ヴィオリストのtacacoさん(手塚貴子さん)を誘ってみたら、OKのお返事をいただいたので、一緒に観に行くことになった。
tacacoさんはジム友達でもあるが、オススメの韓国映画を教えてくださったり、社会の話もきちんとできる方なので、この映画を一緒に観るならtacocoさんしかいないだろうなと思っていたのだ。
終わった後、軽く飲みに行きたかったのだが、良い時間帯のものがなく、グランドシネマサンシャインでやっている夕方からの回を観た。

内容は、朴正煕大統領暗殺事件の実行犯側の視点で描かれたもので、実話を元にした「フィクション」ではあるが、犯行に至った動機や経緯は似たようなものだったのだろうと思わせるリアリティがあった。
10年以上前に、同じ事件を扱った『ユゴ 大統領有故』という映画も観たのだが、あちらがブラックコメディだったのに対し、こちらは硬派なスパイ映画のような仕立て。
志のために、非道にも、意に沿わないことにも手を染めてきたにも関わらず、志を同じくしていたと思っていた相手から裏切られた時、こういう行動に出るのも致し方ないとも思った(かといって正当化はしないけど)。
人間の尊厳というものを踏み躙られた、でもそこまで堕ちてしまった自分への憤りや絶望感も伝わってきた。

描かれる権力者たちの振る舞いは今の日本にも似ていて、40年前の韓国みたいな状況との類似性に軽く目眩がしたりもする。もっとも、どの時代でも多かれ少なかれ権力者の腐敗の仕方は似てくるのかもしれないけれど。
暗殺に至る過程と心の葛藤、変遷を丁寧に描いている良作だった。

イ・ビョンホンは「韓流ブームの人」に見られるし、僕も昔はそう思ってたけど、本当に上手いよね。
ことが全て終わった後に我に返るまでの演技とか、セリフがないのに心情が伝わってきてグッときた。大きなスクリーンで映えるのも凄い。改めて良い役者さんだと思った。

映画の中でマッコリとサイダーを割ったものを「配分で美味さがかわる」といって飲んでいて、それを超飲みたくなった。
あと大統領がシーバスリーガルを持ってきて主人公と二人で飲んだり、“最後の晩餐”でも主人公がガブ飲みしていたのが印象的で、早速帰りに買って飲んだ(映画ではストレートだったが、さすがに無理なのでロック)。
なんだかんだで俺は、作中に出てくる食べ物や飲み物に反応しやすいな。

終わった後に感想をしっかりと話す時間はなかったけれど、やっぱり、ひとりで観るよりもtacacoさんと観ることで、映画の中身を共有できたことはよかった。
物事をきちんと共有できる相手がいるというのはとても幸せだしありがたいことだ。
交友関係の狭い僕だけれど、そういう人に恵まれているというのは運が良いということだろう。
といいつつ、映画前にベルギービール飲みながら色々近況報告やら何やら話したけど、その中身は秘密だ。

そんなわけで、ちょっと下降気味の日々に良い息抜きができた。
観たい映画は他にもいくつかあるから、こういう状況でも行けるものは行っておこう。