『ズートピア』

ディズニーアニメ『ズートピア』を観た。

そこかしこから聞こえてきた「とても面白い」という噂に違わずとても楽しく観た。これまた図らずも僕が好きな「バディもの」で、そのあたりも楽しめた要素。
主人公ジュディの表情が『シュガー・ラッシュ』のヴァネロペとそっくりだなーと思ったら、監督が同じ人(リッチ・ムーア。この映画だと共同監督だけど)だった。

肉食動物と草食動物の分類が、この映画だと差別と区別についての下敷きになっていて、それは今のアメリカの抱える問題の隠喩なんだろうと思う。目的のためなら、多少の手段の倫理的逸脱もやむを得ないと嘯く者や、善人のようでいて、これまた目的のためには冷徹に物事を実行する者、そういう人たちが権力の中にいるのだ、という風刺が垣間見られる。
そうした舞台のズートピアは理想のアメリカ合衆国でありつつ、結局、差別意識や偏見から逃れられない現在のアメリカの姿を描いている。
夢を叶えようと思えば、誰にでも叶えるチャンスはあるといいながら(それは確かに真実を含んでいるけれども)、実力だけではなく、出自も問われてしまうのだ。このあたりが深い。

とはいえ、それを声高に主張するわけではなく、ウサギ(草食)のジュディとキツネ(肉食)のニックのバディぶりと、小気味のよいアニメ展開を楽しみながら、こういう大きいテーマについて考えさせるあたりがディズニーの真骨頂なんだろう。

ジュディ役の上戸彩はなかなか良かった。続編が作られても声優は同じままにしてほしい(ディズニーは声優選考が厳しいから、多分変わらないだろうけれど)。

夢に向かって頑張れば乗り越えられること。差別という問題を抱えながらも、それを克服して、皆で共により良い社会を目指そうとする思いを大切にすること。
そんなことを思わされる素敵な作品だった。