沢田研二がコンサートをドタキャンしたことが話題になっている。
自分もイベント主催の端くれとして「集客」という問題に関わる仕事をしているので、色々と思うところはある。
集客って本当に難しいんですよね。特に今の時代は情報が増えすぎてしまって、そこに埋もれてしまう、というのが一番大きな要因だと思うが、それを解消する良い方法も生まれていないのが事実。
結局、口コミ(それはネット上での誘いも含めて)が一番強いんだとは思うんだけれどね。
とはいえ、ジュリーに「友達呼んでください」とか「手売りしてください」とか言えないよね。規模がそういうレベルじゃない。
ジュリーはもう「ジュリー」という看板で売るしかない。そのアベレージがさいたまスーパーアリーナでは7000人だったということだろう。
7000人も集まったんだからやるべきだ、とか、たとえ一人でもやるべきだ、とかいう意見も多いけれど、今回のキャンセルについてはジュリーと主催者の信頼関係がなかったことが原因なんじゃないかなーと思う。
同じ7000人だったとしても、早くから説得したり、これだけ一生懸命やりましたという誠意を示したり、どうしてもジュリーにここでコンサートしてほしい、という熱意があればジュリーはやったんじゃないかなと思うのだ。
今になって考えれば、事務所とか主催者が「ジュリーが人数少ないとライブしたくないと言っています。このままだとピンチです。家族や友達を一人でも多く誘って来てください!」みたいなぶっちゃけツイートでもしておけばよかったんじゃなかろうか。
当日まで9000人いると2000人サバ読んで伝えていたこととか、座席をつぶして満席感を出したりとか、「満席にします」という約束をそういう姑息な手段で逃げ切ってしまったような印象を受ける(ジュリー側の話しか報道されないから、本当はわからない前提で書いてます。実際はジュリーが本当にワガママな人ってオチかもしれない)。
そもそもジュリーは、さいたまスーパーアリーナを満席にするポテンシャルが自分にはないとわかっていたんだと思う。だからやりたくなかったんだろう。
それでも「やる」という意欲をジュリーに持たせることができたら、少なくとも興行はできたんだと思う。
結局、最終的には、そういう主催者の熱意だとか、お互いの信頼関係がモノを言うと思っている。
それは自分が今まで担当してきたイベントの経験上ね。
今の世の中、集客って本当に水モノだ。
もちろんビッグネーム、ビッグスター、料金設定など、集客をプラスに見込める要素はあるし、それの積み重ねがベースにはなる。なるんだけど、こればっかりは「絶対に上手くいく」ことはほとんどない。
だからこそ興行は、演者と主催者(裏方)の信頼関係で成り立つのだ。
もちろん今後の自分への風当たりを考えれば(そして関係者の中で責任をとらされて人生が変わる人が実際にいるだろうことを考えれば)、ジュリーは舞台に立つべきだったと思うけれど、そんなことはジュリーだってわかっているはずだ。それでも舞台に立たなかったのは、彼の言う「アーティストとしての意地」だけではないのだろうと、イベント主催者の端くれとしては思うのだ(表に現れない結構な“切った張った”はあったはずだ)。
集客はもちろん大事。客席が満席になることが演者の最大のモチベーションであり、喜びであることは間違いない。でも、それ以外の喜びを、主催者が演者に持ってもらえるにはどうしたらいいだろうか。
そんな課題を考えつつ、この話題を見てしまったりしている。
答えはまだ見つからない。
でも考え続けましょう。