銀座山野楽器で行われた「楽器は、健康寿命を延ばす!」という講演&コンサートに行ってきた。
これはピアニストの蔵島由貴さんの著書「生涯健康脳をつくる!ゆび1本からのピアノ」というピアノ教本の刊行記念イベントで、この本を企画した方と仕事上のつき合いもあるのだけれど、なにより今、僕がこの教本でピアノの練習をしているので、いち読者として楽しみにして参加した。
この教本は、数々のクラシックの名曲が左右1本ずつで弾ける練習曲になっていて(後半5本指の曲もあります)、しかもちゃんと原曲のエッセンスを活かしたアレンジがされているので、練習していてとても楽しい。
あと、僕のようにクラシックの曲が流れた時に「聴いたことあるけれど曲名がわからない」という人間には、曲を覚えるのにも役立つ。
僕は20年近く前に、保育士免許を取るためにバイエルを習っていて、免許取得後も2年ぐらいポピュラー曲を先生に習って練習していたのだけれど、家でピアノ(キーボード)を弾く機会がなくなってからは全くピアノに縁遠くなってしまっていた。
でも、ずっとピアノで弾き語りをしたいと思っていたし、とあるピアニストの方から「曲をつくるなら鍵盤楽器はできたほうがいい」とも言われていたので、今年電子ピアノ(ちゃんと88鍵あるやつだ)を買って、この教本で再チャレンジを始めたのだ。
「生涯健康脳」というタイトルから、どちらかというとシニア向けに作られたものなのだろうけれど、とにかく何か知っている曲が弾きたい、という人にもオススメしたい教本だ。
さて、そして今日のイベント。
3部構成の第1部。まずは教本を監修した東北大学の瀧靖之教授が、いかに趣味を持つことが脳の寿命を長くするのに良いか、ということを講演。楽器演奏者は脳年齢が若いということをエビデンスを交えて、説得力のあるお話しをされる。語り口が柔らかく、またご自身がピアノ愛好家ということで、音楽愛を感じる講演だった。
そして、第2部では、瀧教授と蔵島さんが、ピアノの楽しさや楽器演奏の脳への良い影響などを語った。
そのときに蔵島さんが語った「ゆび1本で弾く練習は、プロが初心に戻りたい時にする練習でもある」という話が印象に残った。
普段5本で弾いているものを1本にすることで、曲へのアプローチをシンプルにする。そうすることで、曲に対して自分の飾らない個性が出てくるとのこと。
ピアニストにとっては、5本で弾くよりも1本指で弾くほうが弾きにくい場面は多々でてくるが、1本指でも「歌うように弾くこと」を意識して弾くというエピソードにプロのストイックさを感じた。
休憩をはさみ、第3部は蔵島さんによるミニコンサート。
ショパンの「幻想即興曲」などを解説を交えながら演奏。その高い技術もさることながら、1音1音に魂を込めるように弾く姿に惹かれたし、それでいて表現が大袈裟になるわけではなく、むしろ各曲の世界観をきちんと表現していて聴き応えがあった。
会場がイベントスペースだったため、音響で苦労しただろうが、それを補ってあまりある演奏と、音楽に真摯に向かう姿勢が見られてとても良かった。大きいホールで演奏を聴いてみたいピアニストだ。
本のテーマでもある「ピアノを演奏することは楽しい」というメッセージが伝わり、1時間40分ぐらいの長丁場が、あっという間に感じられた素敵なイベントだった。
最近サボり気味だったので、心を入れ直してまたピアノ練習を再開しようと思う。
脳のためにもね。