追いかけて仙台 前編

仙台。

好きな芸能人を追いかけて仙台。

自分がそういうことをするとは、昔は思わなかったわけで。
それどころか、つい3カ月前まで想像だにしなかったわけで。
でも、事実、僕はその日仙台にいた。
それもまた人生の面白さという奴だろう。

今回の旅の相方であり、TrySailファンの先輩である江戸川台ルーペとはもう20年以上の付き合いになるが、二人きりで旅行をしたことはこれまで一度もない。学生時代の合宿(合唱部)や、日帰り三人旅、彼の実家に遊びに行って泊まらせていただいたこともあったが、ふたり旅しかも泊まりは初めて。
もう、お互いの何もかもをほぼ知り尽くしている間柄(僕の人生のうち唯一の「ダブルデート」をしたことすらある)とはいえ、僕としても若干の緊張をしていた。TrySailのことで、言い合いから殴り合いに発展しないとも限らない(実際そんなことはなかったです。健全)。

旅の始まりは大宮から。
やまびこは最速の新幹線ではないが仙台まで約1時間半で行ける。近い。
途中、宇都宮でアドバルーンがあがっているのを見た。
アドバルーンって久しぶりにみたね、という話をした。僕は、昭和のデパートを思い出した。だいたい平成以降にアドバルーンって見たっけ?
宇都宮だと今でもわりと普通の光景なのだろうか。そういえば、今日は日曜だった。
日曜のデパート。賑わう店内、屋上の遊具、レストランで食べる洋食。
まるで昭和だ。

そんな地方都市の光景で話を膨らませられるほど、テンションは高い。冷静を装ってみたが、なんだかんだで旅行は楽しい(とくに旅の始めは元気なのも手伝って)。
あるいは新幹線のようなもので、高速移動すると自分の構造分子が揺さぶられてテンションがあがるのかもしれない(だいぶ思考がおかしい)。

江戸川台ルーペは駅弁を買っていたが、朝食を済ませていた僕はチップスターの塩レモン味と、炭酸水レモン(レモンかぶった)と、懐かしさのあまりm&m’sのピーナッツチョコを買って車内で食べた(中学生の時、毎日のように食べてたのだ)。
奇しくも黄色で揃ってしまって、江戸川台ルーペから「ナンス推しじゃないですかー」と言われハッとする(注:ナンスこと夏川椎菜のイメージカラーがイエロー)。

黄色s

もちょ推しとかいいながら(注:もちょこと麻倉ももはピンク)、黄色で揃えてしまって、潜在意識的にナンス推しになってるのかもしれない。
「うるせー、ルーペだって天ちゃん推し(注:天ちゃんこと雨宮天はブルー)のくせに、青い色なんにもつけてねえじゃねえかー!」とTrySailファンの推し方ディスりあいごっこ(なの?)してじゃれ合ったりして、それもまた楽しい(馬鹿だな)。

そうこうするしているうちに、新幹線はあっという間に仙台に到着。
同じ号車に「TrySail」と書かれたスポーツウェアを着ている人がいて、ここですでに一人、先輩を見つけてしまう。
「あ、やっぱり今日、仙台でライブがあるんだ」とホッとする。
日付が間違ってないか、とか場所が間違ってないか、とかそういう(心配性すぎる)不安がややあったのだ。多分、実感がまだ湧いていないのだ。

まずは身軽になるため、ホテルに荷物を預ける。
泊まったホテルは「コンフォートホテル仙台東口」というホテル。ビジネス系のリーズナブルなホテルにしては部屋はそこそこ広く、快適だった。
翌朝の話だが、無料の朝食がついていて、それがわりと美味しかったので驚く。こういう「無料朝食」って、タダな分、残念な感じのものが多いのに、ここのは普通に美味しかった。
あと、スタッフの方々も感じが良かった。また来たい。

さて、せっかく仙台に来たのだからと、牛たんを食べることにする。
というか、これが今回の旅の唯一「仙台観光」な部分だし、おそらく今日のライブでもトークの中に牛たんの話は出るだろうから、食べておいてその味を共有しておいたほうがいいだろうと思ったのだ。
有名店はたくさんあるが、その中で今回は「伊達の牛たん本舗」を選んだ(牛たん通り店)。「極厚芯たん定食」というのが美味しそうだったからだ。
そして、これは本当に美味しかった。
前回の仙台旅行で食べた牛たんも、東京で食べる牛たんも美味しいが、それよりも肉厚で味つけもしっかりしていた。
江戸川台ルーペは、東京で超有名なタン塩を出す焼肉屋の常連にも関わらず、仙台牛たんは初めてらしく、良い店を選べて良かった。

極厚芯たん定食

店に入るまで20分ぐらい並んだのだけれど、その時に某人気声優同士の結婚情報をヤフーで知る。
声優でも誰でも、ファンである異性の芸能人が結婚するのはなんだかんだでショックだろう(衝撃度は人それぞれとはいえ)。
僕らはおっさんなので(ルーペは既婚者だし)まあ祝福はできるのだけれど、もし「今日がその人のライブ」というタイミングでこのニュースを知ったら、それはそれで阿鼻叫喚だよね、なんて話をした。今日、僕らがその立場じゃなくて本当に良かった(しみじみ)。流れで結婚発覚直後にバスツアーをした人いなかったっけ?と某アイドルの話になったりもした。センシティブ。

その後、まだ時間があったので、お土産の下見をしておく。去年、来ていたのでお土産屋街の場所がわかっていたのは効率がよかった。何ごとも経験。
途中、「100人食べ100人“うまい”と言った伝説の菓子」というキャッチコピーのお菓子を見かけた。
「90%がリピーター」とか「95%が美味しいと支持」とかならわかる。
「100人食べ100人“うまい”」って言いすぎじゃないか、と。親戚が言ってくれただけじゃないか、と。せめて「99人」にしとけよ、と。なんなら「俺が101人目で“うまい”と言わない人になってやろうか」と、なぜか挑戦的な態度になってしまう(社交辞令を許さないタイプ)。
で、ひとつ買って食べてみる。
うーん、正直言うと、まあ“うまい”って言いますよ。
だから広告は嘘じゃない。お菓子が嫌いな人は別として、好きな人は“うまい”って言うだろう。
でも、なんだろう。だからといって「もう1個!」というふうに思わないのは。「負けた」ことを素直に認めたくないだけだろうか。「物は言いよう」じゃねえか、と思うからだろうか。
でも、本当、まあ“うまい”です。仙台行った方はぜひ試しに食べてみてください。

一応このお菓子です

さらに時間があるので、繁華街(西口)のほうを散歩することにする。
旅行ガイドらしきものを全く買わなかったので、どの通りがメインなのかわからないが、駅からまっすぐ伸びるアーケードを歩く(クリスロードってとこでした)。
道幅が広く、どこまでも続くアーケードに二人で感動したりする。途中、エッグスンシングスがあったりして、仙台はやっぱり都会だなーと思う。
その実、古びたスナックみたいなのが並ぶ狭いビルの地下へ続く階段を江戸川台ルーペが見つけて、どうしても行ってみたいというので降りてみた。そこは思った以上に昭和だった。
最先端の表通りと時代に取り残される地下街。地方都市あるあるな光景なのだろうか(「柏にも似たようなのあるんじゃない?」と僕は言った)。

散歩に飽きて、しばらく歩いた先にあったサンマルクカフェでひとやすみし、頃合いを見ていよいよ会場に向かうことにする。
ライブ会場である「サンプラザホール」は駅を挟んで反対側にあるので、そこから30分ぐらい歩いた。

物販が2時30分開始予定だったので、3時前ぐらいに着ければいいな、と思いつつ、なんだかんだ混むと心配なので、2時20分ぐらいに会場に着いた。
予想よりはやや少ないが、案の定けっこうな行列が。

ここで“ブレード”(=サイリウム=ペンライト)を買えなかったら、楽しみ半減どころか、ライブ中、所在なくなってしまうので、売り切れないことを祈って並ぶ。幸いにも天気予報が外れて、日差しが強いぐらいの気候だったので、外待ちが苦にならず、ありがたかった。
果たして1時間半ぐらい並んだあとに、物販にありつく。
当たり前といえば当たり前だが、サイリウムはライブを楽しむ「要」の道具だし、すでに持っているファンもたくさんいるからか、十分に用意されていて無事に入手できた。その他にTシャツとパンフレットと仙台限定キーホルダーを買う。缶バッチが入っているガチャガチャも3回分やった。
こういうところにきたら、いかにひとつでも多く行事(っていうの?)に参加して楽しむべきだと理解する。
「同じアホなら踊らにゃそんそん」というのはけだし名言だ。

それはともかく“ブレード”を手に入れた万能感はすごかった。
3800円と結構いい値段はするが、ボタンで色を変えられて、電池交換でずっと使えるのだ。都度、バージョンが違うものが売り出されるので、過去のものを含めて数種類を持っているファンもけっこういた。
今年だけでも2バージョン出ていたので、僕もそれぞれ1本買おうかとも思ったが、新参者が2本振り回すのはなんだか“調子に乗りすぎ”な気もして、1本にしておいた。
なんというか、これを手に入れてやっとファンの一人前になった感じ。
職業「TrySailファン」の「じゅくれんど」が、「かけだし」から「したっぱ」になった感が強い。

それから開場までの1時間はホール前の広場で、江戸川台ルーペがもってきたiPadで過去ライブの映像を見たり、Twitterを見たりして過ごす。
ファンの方々もそこで入場待ちをしていて、その層を見ると、中心はもちろん20代~30代の男性だけれど、本当に老若男女幅広い層がいた。法被を来たり、髪色を青く染めたりと、コアなファンもいるが、皆さん行儀がいいというか、礼儀正しいというか、そのあたり、ああ自分もこのグループのファンで良かったなとぼんやり思った。
3人の女性グループがTrySailに憧れているらしく、メンバーのイメージカラー通り、一人ずつピンクと青と黄色のコーディネートをしていて微笑ましい。それぞれ役割分担をしていて、なんとなく雰囲気も本人に合っているように見える。憧れの対象となる同性がいる、というのは素敵なことだと思う。

そんなことを考えているうちに開場時間となり、僕らはついに、初ライブ参戦に挑むことになるのだった(続く)。