「クニトInt’lユースオーケストラ 第5回定期演奏会」

石神井Int’lオーケストラ定期演奏会と同じ日に、姉妹オケであるクニトInt’lユースオーケストラの定期演奏会も行われた。

聴いた感想をひとことにすれば、
はっきり言ってこれは「子どものオーケストラ」ではない。

団員は小学生以上高校生以下。ほとんどが小中学生であるが、いわゆる「小さな子が頑張って演奏している」演奏会ではないのだ(もちろん、そういう可愛らしさもあるが)。

第1部の「セントポール組曲」と「シンプルシンフォニー」。
合奏曲としてはさほど難しくない曲なのかもしれないが、ただ楽しんで弾くだけでなく、しっかり大人の演奏、つまり指揮者に求められるレベルの音を出そうと、皆が真剣に弾いているのだ。
もちろん石オケからの賛助メンバーやプロ演奏家である講師が音楽的な支えとはなっているのだろうが、その存在に決して甘えることなく自分の演奏に徹する団員たちの姿からは「子ども」と「大人」を区別することはできない。
「ステージに上がった以上はすべての演奏家が対等」というようなことを考えさせられた。

音楽監督・指揮者の西谷国登さんも、演奏前に声がけをしてモチベーションをあげたり、団員の緊張をほぐす間をつくったり、と石オケよりもアプローチの仕方を増やしていたけれども、曲が始まってしまえば遠慮なく指揮をふる。
団員を「子どもとして」ではなく、きちんと「いち演奏家」として扱う姿は、このクニトオケの子どもたちの音楽的成長に大きな影響を与えるだろうと思った。

 

そして世界で活躍するピアニスト、ジャスミン荒川さんと共演できたことも、大きな影響を与えただろう。
曲はリストの「ピアノ協奏曲 第1番」。
3楽章制のアレンジだったが、団員も最後まで集中力を切らさずにジャスミン氏の演奏を支えた。
そして、ジャスミンさんの演奏は圧巻のひとこと!
まさかアマチュアの(しかもユースの)オーケストラでこういう演奏を聴けたというのは、聴衆にとっても嬉しい驚きだったに違いない。

西谷さんが「超一流の腕前」と絶賛するピアニストと一緒に演奏する機会を小さいうちから得られたことは、貴重な財産であり、贅沢な経験だろう。今は、その意味がわからない団員もいるかもしれないが、年齢を重ねて演奏を続けていく中で、この経験が生かされる時が来るはずだ。

 

アンコールの「ホルベルク組曲」まで変わらぬ「大人の顔」をした演奏を続けたクニトInt’lユースオーケストラの団員たち。
このメンバーたちが音楽的に、そして人間的にどう成長するのかも楽しみになってくる。そんな演奏会だった。