ご縁があって、舞台『リトル・ヴォイス』の製作発表会に行ってきた。
『リトル・ヴォイス』と言えば、映画版を公開当時劇場で観た。
ハリウッド大作ではなく、イギリス映画だったせいかロードショーをしておらず、銀座だか渋谷まで観に行った覚えがある。
しかしながら、映画の内容はほとんど覚えていない。
というのも、本編が始まる前にユアン・マクレガー主演の5分程度のショートムービー『Desserts』が併映されて、これがまさかのホラー。
ミュージカルドラマを観にきたはずなのに、ホラー映画を見せられるという展開で、本編の印象が完全に消されている(で、逆に『Desserts』についてはよく覚えている)。
当時を考えると「ユアン・マクレガー人気」のおかげで、この映画も話題になった部分が大きいから、ファンサービスとして併映したのだろうけど完全に裏目だったと思う。
さて、それでも「面白かった」という漠然な感想を持っているこの映画を日本で舞台化するという。主演は大原櫻子さん。
制作発表会の中で、役の“リトル・ヴォイス(LV)”として歌唱を行うシーンがあったのだが、彼女が“役”として登場した時に、映画で観たシーンが蘇ってきた。
思い返してみれば、この『リトル・ヴォイス』という作品は、普段は誰ともコミュニケーションをとれない少女が、レコードを聴くうちにその往年の名歌手の見事な歌マネができるようになって、その才能を見出される、といった内容だった。
引きこもりの彼女がステージにたった途端に、スターが乗り移ったように歌い始める。
その彼女が醸し出す、不安と歌うことの幸せが入り混じった感覚が、大原櫻子の演じるLVから強く感じられた。
しかもこの役の難しいところは、歌をしっかり聴かせながらも、歌マネとしても成立させなければならないということ。歌手としては、自分の個性とマネのバランスをとらなければならないのだが、今日、お披露目だったにしては見事なパフォーマンスだった。本番までに磨きをかければ、大原櫻子流の「リトル・ヴォイス像」をつくれると思う。
共演者の方々も、本当に面白い舞台をつくろうという気概が強く感じられた製作発表会だった。期待して観にいこうと思う。
舞台『リトル・ヴォイス』は、5/15〜28 天王洲銀河劇場にて上演。
その後、富山・北九州での上演もあり。