『ラ・ラ・ランド』の可愛らしい魅力

ミュージカルは好きだけれども、なんとなく「好き」と公言するのは憚られる。
なんだか、こそばゆい感じがするのだ(まあ好きって言ったって、まともに観たの『レ・ミゼラブル』ぐらいなんだけど)。
それでも、『ラ・ラ・ランド』は前評判がとても良かったし、なにより予告編が楽しそうで「これは好きなタイプの映画だ」という直感も働いたので、公開してすぐに観に行った。

オスカーを6つもとったけれど「ハリウッド大作」というより、インディーズ・レーベルの単館上映のような小品。だから作品賞を取れなかったのもさもありなん、という思いがある。「そんな重荷、背負わせないであげてよ」という思いだ。でも期待どおりの、とても僕の好きな作品だった。

エマ・ストーンはベストアクトではないと思うが、いまいち垢抜けない「女優の卵」を活き活きと演じていた。全体的にキュートな魅力をふりまいていて、彼女のための映画になっている。ちょっと癖のある二枚目といったライアン・ゴズリングも、陰のあるキャラクターを違和感なく演じていた。

物語の鍵を握る人物をR&B歌手のジョン・レジェンドが演じているのだが、劇中の曲は、物語の中では「邪道」のような扱いを得るのだけれど、彼の歌声はそのほかの曲の歌手とは比べ物にならないくらい上手い。惹きつけられてしまう(ジョン・レジェンドのアルバムを思わず買ってしまったほど!)。ちょっと皮肉めいた演出なのかもしれない。

ミュージカル映画というものは、なんとなく肩肘張ってみなければ、という気になってしまう。対してこの映画の良いところは、何度も気軽にみたくなるところ。可愛らしい一本。
可愛らしさからいったら、ウディ・アレンの映画を観ている感覚になる(だからこの映画のヒロインがウディ・アレン映画で2本続けてヒロインを演じたエマ・ストーンなのがすごくしっくりきた)。

予告編と違うのは、そこで感じるような、ウキウキしてハッピーな映画ではない。きちんとハリウッドで今起きているだろう現実を描いている。描かれなかった部分とあったはずの理想の未来。映画の行間にまで思いを寄せずにはいられない。
それでも人は夢を追いかけるし、夢をかなえる。得たものと失ったものははかりにかけられない。どちらも飲み込んで我々は生きていくのだなあと思ったりした。

大画面と大音量で、多くの観客と共有しながら観たくもなるけれど、手元において、いつでも気が向いた時に観たい作品でもある。