友人に誘われて新日本フィルハーモニー サントリーホールシリーズ第665回定期演奏会に行ってきた。
仕事柄、クラシック音楽やオーケストラとかと縁があるほうなのだが、プロのオーケストラを聴く機会があまりなく、それにちゃんと「自分の意思」で聴きに行くことが少なかった。そこで、クラシック好きの友人に、一緒に行きたいと頼んでおいたのだ。
日本クラシック音楽で超有名なサントリーホールだけど、場所ですら知らなかったぐらいの不勉強(CCレモンホールの場所なら言えるのにな)。
足を踏み入れてまず思ったこと。サントリーホールはでかい。
というか天井が高いし、広さに対して席数に余裕があって贅沢な造り。内装美しい。天井から吊り下げられたガラス板も響きを考えているのだろうか(未確認)。
こういう場でオーケストラの演奏を聴くのは新鮮な気分だったし、少し緊張もした。
今回の演奏曲はベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲 ニ長調 OP.61と、ブラームス作曲、シェーンベルク編曲のピアノ四重奏第1番 ト短調 OP.25(管弦楽版)。
クラシックというかこの規模のプロオケ初心者なので、友人に聴きやすい良席を選んでもらった。
ヴァイオリン協奏曲は、ソリストにクリスティアン・テツラフを迎える。世界で活躍しているヴァイオリニストだけあって、出てきただけでカッコいい。そして上手すぎて笑っちゃうぐらい素晴らしい演奏(語彙)。
難しいことを簡単にやっているように見える。
たとえば指運びが曖昧に見えるのに、音程はきっちり取ってくる、とか、弓の返しが何度もあるのに全く音が切れないところとか。基本が素晴らしいのはもちろんのこと表現力も高い。45分が全く飽きない。
もちろんそれは才能があってこそなんだろうけれど、ここまで弾けるようになるにはどれだけ鍛錬をしてるのか、と思うとそれだけで敬意を表したくなる。そしてそんな演奏家でも、たまに“顔で弾く”瞬間もあるのが、なんだか面白かった。
サントリーホールのおかげか、楽器の響きが天井まで回って届く感じ。直接音圧がくるのも迫力があって好きだけれど、響きに包まれているような優しい感じがして良かった。
ベートーヴェンのオケの演奏ももちろん素晴らしかったのだけれど、ブラームスはより凄かった。エンジン全開で、プロオケの音をとことん浴びる感じ。第4楽章は、オーケストラの魅力「全部載せ」な展開で、初心者の僕にもわかりやすくて楽しかった。
そして、今回の指揮者トーマス・ダウスゴーがとにかく素晴らしかった。
他のオケを聴いていない僕に「聴き比べ」はできないけれど、今回はそれぞれの曲のドラマが見えた。例えるなら、ベートーヴェン、ブラームス&シェーンベルクという脚本家が書いたものを指揮者が監督して映画を撮っているような感覚。演奏家はみんな演者だ。
素晴らしい曲があって、一流の指揮者が一人一人に的確に役割をあてて、それを演奏家たちが心得て演奏している。
一つの物語にきちんと仕上げたみたいに思えて、さほど曲を聴き込んでいない自分でも飽きずに最後まで楽しめた。そして、聴く方にも心地よい疲れがあり、それもまた新しい体験だった。
今回はもちろん良い席だったのだけれど、2階の張り出した感じの席があって、あそこでそれぞれの演奏家の動きを見ながら聴いてみたいな、とも思った。
とても贅沢で素敵な音楽体験だった。また機会を作ってぜひ行きたい。