かつて朝ドラを一度もまともに見たことがないのに、主役の葵わかなの魅力にひかれて「わろてんか」を毎日録画してみている。
だけれども、どうしてもいまひとつ面白くない。
葵わかなはベストアクトとは思わないが(「ボキャブライダー」のポテンシャルからしたら、もっと笑いの“間”のセンスがあると思うのでコメディエンヌ方面に演出してほしい)座長らしい立ち居振る舞いをしているし、濱田岳はあいかわらず芸達者だし、高橋一生は求められている御曹司像の中に、高橋一生らしい陰(というか狂気)を含んだキャラをつくって存在感あるし…
と、役者自体は魅力的なキャストが揃っている。
話としても、鈴木京香演じる義理の母から認められた回や、月の井団真の復活(これまた北村有起哉がとても良かった)、アサリとおじいちゃんの家族愛、など感動するエピソードは挿入される。…なのだが、本筋がパッとせずに盛り上がりにかけるのだ。
面白くならない理由はいくつか考えられるのだが、その中でも気になったのは、お金がらみのトラブルが簡単に片付いてしまうことだ。
寄席を買う資金がないときは、勘当された実家に頼んで用立ててもらう。これはまあわかる。
人気落語家月の井団吾の独占契約金1万円は、どうやって工面したかわからないけれど、払ったこと(というか団吾師匠を独占できた)ことになっている。ここでちょっと、そのお金どうしたの?という疑念が浮かぶ。
そして、先週。
芸人たちを寄席に出してくれる胴元とトラブルになり、芸人を出さないといういやがらせの末、寄席があけられずにあわや倒産の危機、というような展開になる。結局、この胴元のあまりの卑劣ぶりに芸人たちが反旗して、主人公の寄席で直接雇ってくれるよう大量に押しかけてくるのだけれど、これで芸人は確保できたものの、胴元から全員の借金1000万を払え、と脅されてしまう。
どうすんの?っていうときに
「私にまかせといてください!」との頼もしく返事をしたてん(主人公の名前)は、ずっとコツコツ貯めてつくった1000万を取り出し、芸人たちの借金を返してやるのでした。
って、なんじゃいそれ!
いや、何か意味ありげに「壺」(貯金=へそくりが入っていた)をじっと眺めるシーンが今週盛り込まれてたので、何かあるとは思っていたけど。
頑張って貯めてました。
で、解決されても全然感動しない。っていうか、それまで「お金があったら色々できるのになー」と、お金のことで悩むシーンが結構あったのだから、それがあるならもっと前に上手く使う場面あったんじゃない?とも思う。
万事休すの場面を「実は貯めてました」「実はもってました」で、解決されても感情移入できないし、シラけてしまう。
ストーリー上、人の情に頼って問題を解決するのはまあわかる(出来過ぎではあるけど)。今回も、そういう方向で解決したならば「お話」としては納得できるのだが、ただ実話を元にしているだけに、実際も苦しんだであろう「お金の問題」がふってわいたような話で解決されてしまうところが、「わろてんか」がイマイチ面白くならない理由の一つだと思ったのだ。
その後の、大量の芸人を雇って、寄席小屋を10軒に増やしてますます繁盛した、という部分は、この物語の中ではかなり盛り上がる部分だと思うけれど、詳しく描かれることなくあっさりとナレーションで駆け抜けてしまい「わろてんか 第一部 完」なのかと思ってしまった(「少年ジャンプ」で打ち切りが決まった漫画の最終回の唐突な展開ぐらいの速さだった)。
でも今週は、そんな大きな展開があったこともさほど関係なく、安来節がなんちゃらみたいな普通の話がまだ続くのだから、今後どうやってさらなる盛り上がりをつくるつもりだろうか。
とはいえ、
ちっとも面白くなかった「後ろ面」も相方ができてようやく面白くなったし、今後は新しい芸人が出てくるそうだし(広瀬アリス演じるリリコも復活するし)、なんだかんだで役者たちの魅力にストーリーも追いついていってほしい。来年に期待。