レビュー2本立て

先日読んだ『熊本くんの本棚』のレビューをカクヨムに書いた

まだカクことをしていない、ヨムだけの人間がレビューを書いて良いのか?と一瞬悩んだが(ルール上良いのか?とマナーとして良いのかの両方)、作者のキタハラさんにもコメントをいただけたし、書いてよかった。

本当に、カクヨム登録している人にはとりあえず10話まで読んでほしい。
近々発売される書籍版は、どこが同じでどこか加筆訂正されているのか、とても楽しみ(書き下ろしパートもあるそうです)。

それから文学フリマで購入した『元祖オーケン伝説』に収録されている『人として軸がブレてんだ』を読んだ。
これは、どこにレビューを書いていいかわからないので、このブログに書く。もし他に良いところがあったら教えてください。

この小説は序盤が激しい。
いやあ、かっ飛ばしてんなぁー、っていうか読者に向かってエグい球を投げてくるなぁ、という感じか。
初っ端から160㎞のナックルカーブ(大谷とダルビッシュと田中マー君を足して3で割らないような奴)を投げ込んでくるので、もうこれはもう超人ベースボールの選手じゃないと打てないと思って、読むことを諦めてしまう人もいるんじゃないかと思うと、惜しい。
回想シーンあたりから、ちゃんと人が打てる球中心の組み立てになるので、どうか先に読み進んでほしい。

こうやって野球に例えるのはおっさんっぽいけど、本編にもちょこっと野球の部分が出てくるからいいでしょう。
しかしアナウンサーに“あの言葉”をつけて呼称するって、どうやったら思い浮かぶんだろう(褒め言葉)。

主人公は「屑」と片付けるほどの屑ではない。でも確かに人として(とくに男として)はてんで“イケてない”。軸がブレている以上に、きっと軸が見当たらないんだ。それがイケてない学生特有のモラトリアムな期間だったりする。
その鬱憤というか、抜け出したいけど抜けられない怠惰な日々の繰り返し(そしてそれでもなんとか生きていけるのだ)。
悔しいと思いつつも自分ではどうしようもない苛立ち。
そういう若さ特有の濁った部分を、自虐的かつ可笑しみをはらませて描く。

迷いのない(イケてる)学生生活を送った人にはなんのこっちゃだろう。
でもその時期、いじいじとオタク的な年月を送った者にはグサリと刺さる(僕もその一人だ)。
そしてこの小説を読んで、そんな年月を許してあげたくもなる。

正直に言えば、「締め切り」や「オーケン縛り」というものによって、慌てたなーという部分や、えいやっと進めたからか、やや辻褄が合わないところがチラチラと見えたりはするが(次、紙の本作るときは校正させてほしい)、縛りの中で“江戸川台ルーペ”らしさというか、彼独特の世界が披露されているのは嬉しい。逆に縛りがあったからこそ、焦点が絞れて、物語に身を委ねやすくなっているのかもしれない。
この世界が好きな人にはとことん愛される小説。
ある特定の人にしかわからない言葉で言えば、江戸川台ルーペの小説は「ファミ通」を愛読していた人にとって、絶対に好みだと思う(それも隔週の「ファミコン通信」だった時代のね)。

なんかまた一つ確実に、指名買いされる作家へ一歩前進したよなー、と思った。
そして、あいかわらず文系拗らせ男子(男性じゃなく)が惚れる女子(女性じゃなく)書くの上手いよね。ズルい。

そういうわけで、心に残った作品の感想はきちんと形にしておこうと、喫茶店に行ってレビューを2本書いた(家だとイマイチはかどらない)。

好きな作品を第三者に伝えるのって難しい。でも、それによって「これ、いいね!」と思う人が一人でも増えてくれたら、それはそれで嬉しい。
だから人は感想を書くのかもしれない。

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