ドラマ「約束のステージ 〜時を駆けるふたりの歌〜」

土屋太鳳は可愛い。

前にも書いたけれど、超美形というわけでもないし、超スタイルがいいわけでもないが(いや平均から比べたら良いに決まってますよ)、なんというか「存在」が可愛い(写真集を買おう、とかそういうふうには思わないんだよなー)。
で、その土屋太鳳の可愛さだけで一点突破したようなドラマが、この「約束のステージ 〜時を駆けるふたりの歌〜」だ。

物語は歌手を夢見る地方に住む20歳の女性、翼が、母親とケンカして家出のように飛び出した先で事故に遭い、昭和50年の東京にタイムスリップしてしまう。そこで、同じく歌手を夢見て上京してきた同い年の女性つばさと出会い、二人でデュオを組んで、10週勝ち抜けばプロデビューできるという「全日本歌謡選手権」に出場することになる。というもの。

まあ、とにかくびっくりしたのは、出だしの母娘が喧嘩するシーンが、脚本の教科書があったら、そのまま書いてあるだろうというくらい、凡庸で「わかりやすい」こと。太鳳ちゃんの演技も典型的な「ふてくされてます」という記号感満載で、母親からビンタされた太鳳ちゃんが(あ、翼が、だ)家を飛び出すまでが、なんかもう、ナレーションでいいよねというぐらいありきたりで、その先の展開に不安をもった。
でも、百田夏菜子演じるもうひとりのつばさと出会ってからは、人を疑わないつばさと、なにもかも冷めた現代っ子の代表としての翼のやりとりが微笑ましく、それなりに見れた。

ストーリーは先が読めるし、面白いぐらい王道を「外れない」。
それでも、前述の通り、頑張る土屋太鳳を見たさについつい画面に釘付けになった。

歌が抜群に上手い、という設定の二人だが、残念ながらなのか、あえてなのか、才能を見出されるほどの「天才的な上手さ」は感じられなかった。才能を見出す元人気歌手(でも一発屋)役の向井理も、プロ歴20年という触れ込みの歌謡選手権出場者役の人も、みんな下手ではないけれど「カラオケの上手い人」レベルなのが気になった。こういうの、アメリカのドラマだとちゃんと歌える人たちが出ると思うんだけどね。
また、本職の歌手である百田夏菜子が、デュオの足をひっぱる役回りというのもなんだか皮肉だ。
全体を貫く、テクニックより気持ちが素敵というトーンは、「歌は上手い下手よりも、誰のために歌うか、が肝心」というテーマに合わせているといえば、そうなのかもしれない。
向井理が歌ってヒットしたという挿入歌「幸せのセレナーデ」はつんくが手がけているが、絶対に昭和50年の曲とは思えない作りなのもすごい違和感(あえて、なんだろうけどね)。

それと、選手権の審査員役は、プロの歌手たちが演じているのだが、本格派の天童よしみが辛口だったり、どちらかというと雰囲気歌手の八代亜紀が翼たちに優しい点をくれるあたりが、妙にリアリティがあって面白かった。

昭和50年のオチの投げっぱなし感や、わかるけどそれ年齢合わないだろう感など、観終わった後にいくつもの「?」が浮かんだものの、結局、最後まで楽しんで観てしまった。
土屋太鳳の歌はエフェクトでかなり化粧しているとはいえ、説得力のある歌声だったし、そもそも彼女は声が良いのかもしれない(僕の好きな声なだけ?)。
そういう点を含めて、土屋太鳳を愛でるという点では素晴らしい作品(そこまで言うか)。

ただね、これを金曜のゴールデンに流すか?という感じもする。
祝日の夕方4時ぐらいから放送されるスペシャルドラマ感が強かった。キャスト陣が豪華なので、ギャラで制作費がけっこうかかっているのだろうけれど、テレビ業界の事情もちょっと垣間見れたりもする。

あと、特筆すべきは全日本歌謡選手権の司会役の半田健人。
いかにも昭和にいそうな司会者像なのに、それでも誰かのマネではない、きっといたであろう「しゃらくさい昭和のいい男」というなりきり演技ぶりが印象に残った。
土屋太鳳を愛で、半田健人に目をみはる。
そういうドラマだった(いや、見どころ完全に間違えてるだろう)。