惜しいけど大人の事情が感じられる映画 『カンフー・ヨガ』

『カンフー・ヨガ』を観た。

この映画を2017年の締めに見るのもなんだけど、予告編が楽しそうで、しかも僕がジャッキー・チェン映画の中で一番好きな『THE MITH 神話』の監督(スタンリー・トン)の映画だったので、劇場で観ておこうと思ったのだ(このことからおわかりかと思いますが、昔からのジャッキーファンではありません)。
結果的には、予告編が一番面白いパターンだった。裏を返せば、予告編がちゃんと映画の見どころをつないでいるということなんだけれど。盛り上がるシーンがほぼ予告編のシーン、という結果で残念。

仕方のない話だが、ジャッキー・チェンは老けた。往年の動きからはだいぶ落ちたであろう『MITH』からだって12年経っているのだからスピーディーな動きがキツくなるのは当然だな、と思う。かわりに若手俳優のアクションシーンを多めに入れてあるが、やはりジャッキーの代わりができるほどの魅力はない。
なので、満足度はいまいちだったのだけれど、見方を変えると現代の大作映画の作り方を踏襲した映画になっているな、という感想をもった。

この映画は中国とインドの合作なので、まず両方の国でヒットするように作られた。そのために両国の代表的なカンフーとヨガをメインに据えたのだろう(あと、歌と踊りね)。
それから、途中で唐突にドバイロケが入るのだけれど、これはドバイが自国の観光産業をPRするために資本を出したように思える。カーチェイスシーンもあって相当大掛かりなロケで、ドバイの全面協力が伺える。
またCGが多用されていて、しかもその出来がハリウッドレベルに高いのだが、これは最近中国資本が多く入っているハリウッド映画からの技術流入の関係で、きちんと使ってモトをとれ、という事情がある感じがした。冒頭のシーンは全編CGで、これは少ししょぼいが技術力向上のために入れた感じがする。劇中の奴は超リアルだった。

つまり、この映画は、これら「ヨガ入れてください」「ドバイ紹介してください」「CG使ってください」それから「ジャッキーに継ぐ若手アクション俳優の顔見せをしてください」という要素(=大人の事情)が初めにあって、それを足し算したらできました、というつくりになっているのだ。
そして納期に間に合わなかったか、監督にあまりやる気が起きなかったからか、どれも中途半端で抑揚のない作品になってしまった。これはすごく間抜けだったので書いておくが、エンドロールの途中で音楽がなくなってしまう映画は初めて観た気がする(ちょっと劇場の空気が変になったよ)。

そんなわけで、ちょっと残念な映画ではあったのだけれど、ドバイには行きたくなった(帰りに本屋でドバイの観光ガイド立ち読みしたぐらい)ので、まんまと製作の思惑にのせられており、そういうこともあって嫌いになれない作品でした。

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